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求償権の管理

信用保証協会が代位弁済した後はどのようになるのか。
信用保証協会は金融機関に対して代位弁済を行うことにより求償権を取得する。信用保証協会の保証は、国(日本政策金融公庫)の保険に掛けられており、代位弁済により一定割合(70~90%)の保険金を受け取り、求償権に基づき、債務者および連帯保証人と求償権の弁済協議を行い、回収があった場合には支払保険金相当割合分を日本公庫に納付することになっている。したがって、求償権回収は信用補完制度を維持する上で重要な要素となっている。

保証協会債権回収株式会社(サービサー)による回収
信用保証協会は信用保証を行うだけでなく、期中の管理、代位弁済後の回収業務と多岐にわたる業務を行っている。国の中小企業対策である景気対応緊急保証制度(平成23年3月31日終了)のように全国統一保証制度の取扱いと、地方公共団体ごとに異なる制度融資を取扱うなど、国と地域の中小企業施策の両面を担っており、そのマンパワーは信用保証審査の部分に大きく割かれているのが現状である。

その一方で、平成10年の中小企業金融安定化特別保証制度実施以降、無担保求償権が増加しており、債務者、連帯保証人の現況を把握し、きめ細やかに返済相談に応じられるだけの人員体制を維持することが困難な状況にあった。求償権管理を効率的に行い、日本公庫への納付額を増加させる必要があることから、平成13年4月にサービサー法に基づく保証協会債権回収株式会社(以下「保証協会サービサー」という)を設立し、より効率的な求償権の管理、回収体制を構築することとなった。保証協会サービサーは、信用保証協会から債権譲渡を受けるのではなく、委託による管理回収を行っている。

その回収姿勢も、一律的画一的な回収措置を講じることなく、債務者、保証人等の実情に応じたきめ細やかな対応がとれるように、各信用保証協会と向き合うような形で営業所を開設しており、信用保証協会の身近で返済相談に応じられるような体制を採っている。一方で、各信用保証協会にも引続き回収担当部署があり、有担保求償権や訴訟案件など特殊案件を取扱うなど、各信用保証協会により体制は異なるが、役割を分担する形で、引続き求償権回収業務を行っている。このように、求償権の回収について、各信用保証協会の回収担当部署と保証協会サービサーとの連携により行われ、回収の最大化に努力している。

信用保証協会の保証債務履行の範囲

信用保証協会の金融機関に対する保証債務履行の範囲はどこまでか。

信用保証協会が金融機関に対して履行する保証債務の範囲は、主たる債務に未収利息および最終履行期限(期限の利益喪失日を含む)後120日以内を限度とした貸付利率と同率の遅延損害金を加えた額が限度である。

不履行債権額の負担
通常、保証人は、主たる債務のほか、利息金額および違約金・損害賠償その他すべてのものについて、保証の責を負うとされている(民法447条1項)。しかし、信用保証協会の場合は、特約(約定書例6条2項)により、保証債務の履行の範囲について特別の定めをしている。すなわち、主たる債務の元金残額および未収利息それに最終履行期限(期限の利益喪失日を含む)後120日(90日または60日としている信用保証協会もある)以内の遅延損害金を加えた額を限度としている。

遅延損害金については、前述のように支払範囲が限定されているため、保証債務の履行期が最終履行期限後120日以上経過した時点で行われたとしても、特段の事情がない限り、原則として120 日分の遅延損害金しか支払われないことになっている。よって、金融機関は、冷却期間(最終履行期限後90日とする信用保証協会が大部分)が経過したときは、すみやかに代位弁済請求の手続をとらないと遅延損害金は120日内で打切られることとなる。

また、金融機関は債務者との特約で、貸付利率よりも高い率で遅延損害金を定めているのが通常であるが、信用保証協会の場合は、その約定遅延損害金利率にかかわらず、貸付利率と同率で計算した遅延損害金を代位弁済することとなっている(約定書例6条3項)。なお、貸付利率の変更があった場合は、特段の事情がない限り変更後の貸付利率をもって遅延損害金を計算する。以上めように、信用保証債務の範囲は限定されているため、遅延損害金のうち代位弁済されない部分あるいは費用等代位弁済の対象とならないものについては、金融機関は別途回収措置を講じることが必要となる。

保証利用と金融機関の義務

信用保証を利用する金融機関はどのような義務を負うのか。
金融機関が信用保証を利用する場合は、信用保証協会に対して、解説に示すような6つの義務を負担する。

貸付実行の通知義務等6項目
金融機関と信用保証協会との間の保証契約の効力が貸付によって生じる(約定書例2条1項)と、金融機関は基本契約(銀行取引約定書)の規定に基づき信用保証協会に対して種々の義務を負担することとなる。これは信用保証取引を安全かつ適切に運営するために定められたものであるが、金融機関の義務に関する主な事項は次のとおりとなっている。

(1)貸付実行・償還状況の通知義務
信用保証書発行後、所定期間内に金融機関が貸付を実行した場合、あるいは貸付後主債務につき金融機関がその債務の全部または一部の履行を受けた場合は、遅滞なく信用保証協会に対し通知する義務が生じる(約定書例4条)。前者が、貸付実行報告の義務であり、後者が償還状況報告の義務である。もっとも、内入弁済に伴う償還状況の通知については、事務合理化の観点から、これを省略し、延滞分の通知(延滞報告)でよいとする信用保証協会が一般的である。通知は、要式主義を前提としており、必ず一定の様式(貸付実行報告書または延滞報告書等)によらなければならない。これは、他の通知事項についても同様である。

(2)保証契約変更の通知義務
信用保証書上の記載事項(保証金額・保証期間・債務者・返済方法・貸付形式・保証人・担保)について変更契約が行われた場合は、変更手続完了後、遅滞なく通知しなければならない(約定書例5条4項・変更実行報告)。

(3)事故報告・期限の利益喪失の通知義務
金融機関が、保証付債権について債務の履行を困難とする事実を予見または認知したときは、遅滞なく信用保証協会に対し事故報告書を提出しなければならない(約定書例9条1項)。なぜならば、信用保証協会にとって、弁済遅延・手形の不渡等の事故を把握することは、保証期間中の債権管理や将来求償権の保全、管理あるいは保証期間延長等の調整措置等のために必要だからである。また、主債務の期限の利益を喪失させた場合も、遅滞なく通知する必要がある(約定書例9条2項)。これは保証債務の履行の範囲(約定書例6条2項)や、代位弁済請求権の存続期間(同6条1項、7条)等との関係で、期限の利益喪失日を明確にしておくことが必要であり、銀行取引約定書等に規定されている当然喪失条項あるいは請求喪失条項のいずれに該当した場合であっても、通知を要することとなっている。

(4)信用保証料徴収の受任義務
金融機関は、債務者から信用保証料を徴収する事務を、信用保証協会より委託されているので、受任者として、信用保証料を徴収する義務を負っている(約定書例8条)。

(5)保証付債権の保全・取立義務
金融機関は、常に保証付債権の保全に必要な注意をなし、主債務の履行を困灘とする事実を予見または認知したときは、適当な保全措置を講じなければならない(約定書例9条1項)。この保全措置の具体例としては、担保の保存、時効中断措置、不渡手形の不渡異議申立預託金に対する仮差押、保証条件保証人等に対する意思確認等があげられる。また、債務者が履行期限に弁済しない場合、金融機関は保証付でない自己の固有債権の取立と同様の方法をもって、保証付債権の取立に努めなければならない(約定書例9条3項)。これは、取立方法の公平さを義務付けただけではなく、金融機関の取立あるいは担保処分による回収金の充当についても、保証付債権を公平に取扱うよう義務付けたものである。ただし、充当順序に関し運用面において弾力化を図り、原則としてプロパー債権を優先させている。

(6)保証債務の履行に伴う債権証書および担保物の交付義務
金融機関は信用保証協会から代位弁済を受けた場合、保証付債権に関する債権証書や担保物等を引き渡さなければならない(約定書例10条)。代位弁済による債権証書・担保物等の移転に関し、民法の規定は、債権の一部につき代位弁済を受けた債権者は、債権証書等を代位弁済者に交付する義務はなく、債権証書に代位の旨を記載して、保証人に債権者め占有にある担保物の保存を監督させればよい、こととなっている(民法503条)。しかし、信用保証協会の場合は、求償権の行使あるいは保全の必要性から約定書例所定(6条)の保証債務を履行したときは、金融機関に対し債権書類および担保物等の交付を義務づけている。

信用保証料率の決定方法とその支払方法

信用保証を受ける中小企業者が支払わなければならない信用保証料はどれくらいか。また、金融機関が負担することはないか。

従来は原則として、一律の料率が政策的に決定されていたが、平成18年4月から、一部の政策的な保証制度を除き、中小企業者の経営状況を踏まえた信用保証料率体系に改めた。基準となる保証料率を保証金額に対し年0.5~2.2%の範囲で9区分に分けて定めた。この基準とは別に、担保による保全状況等の定性要因を加味して最終的な保証料率が決定される。平成19年10月からは責任共有制度が実施され、新たに責任共有保証料率として0.45~1.90の範囲で9区分に分けて定められている。この信用保証料は、金融機関の貸付と同時に、原則として全額が金融機関により徴収される。また、信用保証料は保証委託の対価として支払われるものであり、保証の委託を受けた中小企業者の負担として保証協会に支払われることとなる。

中小企業者の財務内容に応じた9区分の基準料率
信用保証料は「信用保証委託契約に基づいて、信用保証協会が中小企業者のために金融機関との間で保証契約を締結することの対価であり」その「信用保証料の支払と対応する協会の給付は、協会が金融機関と保証契約を締結すること」ならびにこれから生じる「債務者に対する信用供与」および「危険負担」であると定義づけられている。これらの点から、信用保証料とは、信用供与的効果と危険負担効果をあわせもった信用保証という給付を受けることによって中小企業者が、信用保証協会に支払うべき対価であるということができる。

その決定方法は、中小企業者の財務諸表(貸借対照表・損益計算書)をもとに財務面の評価を行うことによる。この評価については、中小企業信用リスク情報データベース(CRD)により行い、この結果に個々の中小企業者の定性要因(非財務要因)を加味して、最終的に各信用保証協会が適用料率を決定する。定性要因について、全国の信用保証協会で統一的に評価する項目としては、①担保割引(最大で0.1%)、②「中小企業の会計に関する指針」に基づくチェックリスト提出、もしくは会計参与設置会社による割引(0.1%)がある。

なお、この信用保証料について、その徴収事務を信用保証協会は金融機関に委託しており、金融機関は徴収した信用保証料を信用保証協会に送付することとなっている。信用保証料の徴収時期については、貸金の返済条件が一括であるか分割であるかを問わず、原則として貸付時に一括徴収することとしているため、金融機関は徴収漏れのないよう、十分注意しなければならない。また長期保証については、分割徴収の途を開き、中小企業者の負担軽減を図っている。

保証金額に制限はあるか

信用保証協会保証付貸出において、貸出金の限度はあるか。保証の種類によって異なるのか。

1人あたりの中小企業者に対する保証限度は、信用保証協会ごとに信用保険に対応する形式により、業務方法書に一定の金額を定めている。各信用保証協会により多少の差があるが、一般的に合計額が2億8,000万円(組合等の場合は4億8,000万円)とする信用保証協会が多い。これとは別に、政府の政策的判断による特別な保証制度もあり、原則として前述の一般保証とは別に併用しで利用することができる。また、各地方公共団体の制度融資に関する保証は、それぞれの制度融資要綱に定める限度額が上限となる。

一般的な保証限度額は合計額2億8,000万円業務方法書上の中小企業者1人当りの保証金額の最高限度については、できるだけ多くの中小企業者に保証の利便を与えること、信用保証協会の危険を分散すること等のために、一中小企業者に対する保証金額が過大とならないよう定められている。組合限度は、組合と名がつけばすべて適用されるものではなく、業務方法書上それぞれ限定的に列挙された組合のみに適用される。したがって、限定列挙された以外の組合(例えば消費生活協同組合)の場合は、個人・法人の保証限度が適用されることとなるので留意が必要となる。

資金使途に制限はあるか

信用保証協会保証付貸付において、資金はなににでも使えるか。それとも資金の使途に制限はあるか。

信用保証の対象となる資金の使途は、中小企業者が自己の事業の維持、発展に直接必要とする運転資金または設備資金に限られる。

事業資金に限られる
信用保証制度の使命は、中小企業金融の円滑化を図り(信用保証協会法1条)、中小企業の健全な育成に努めることにある。したがって、その対象となる資金の使途は、原則、事業の維持・発展等事業に直接向けられるものでなくてはならず、生活費等消費資金は対象としていない。このように信用保証の対象としては事業資金に限定されているが、中小企業の経営基盤強化を信用保証の利用によって図るという目的から、直接的でないが、企業存続に必要な資金も事業資金の範疇で捉えている。解釈によって事業資金とみなされる主な事例は、次のとおりである。

①公租公課、火災保険料、土地建物賃借料(敷金、権利金を含む)事業経営にかかわる公租公課、事業用不動産にかかわる賃借料・敷金・権利金および火災保険料の支払いに要する資金は、事業経営上不可欠なものといえる。

②組合等加入のための出資金
組合等加入が事業の振興に役立つ場合は、事業経営上必要とみなされ、事業資金として対象となる。               
  
③従業員宿舎の建設資金、従業員厚生施設に関する資金
勤労者住宅や福祉施設労働条件を整えることは、経営基盤の強化に必要なことであり、これに要する資金は事業資金として対象となる。

④従業員の持家建設のための事業主の貸付資金
上記③と同様に事業資金として対象となる。

⑤契約保証金支払資金
取引上必要なものであれば、事業資金として対象となる。 

このほか、組合の共同事業や共同施設、福利厚生に要する資金は、大部分の中小企業者たる組合員の事業振興に直接的に役立つものである限り、組合の事業資金として対象となる。なお債務返済資金のうち、特に金融機関が自己固有債権を決済するための旧債返済資金については、金融機関との特約において、信用保証協会が承諾した場合を除いては認められないことが明らかにされているので留意する必要がある(約定書例3条)。

これは、信用保証が金融機関のアフター・ロスをカバーするために設けられた制度ではないからである。しかし、たとえその資金が旧債に充てられたとしても、借換えによって金利条件や返済条件がよくなり、当該中小企業者の事業経営上プラスとなる場合は、信用保証協会の承諾のもとに、これを認めている。このほか判断に苦慮する資金使途の事例については、事前に信用保証協会に相談することが望ましい。

信用保証を取扱うことのできる金融機関の範囲

金融機関であればどこでも信用保証を利用することができるか。
信用保証を利用できる金融機関は、各信用保証協会の業務方法書に定められた範囲の金融機関のうち、協会と基本契約(約定書)を締結した金融機関に限られる。

業務方法書に規定
信用保証を利用できる金融機関の範囲については、法および定款のいずれにも規定されておらず、具体的には各信用保証協会の業務方法書において次のように規定している。
銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、水産業協同組合(それぞれの連合会を含む)、商工組合中央公庫、農林中央金庫、日本政策投資銀行、保険会社(損害保険会社、生命保険会社)、信託会社

金融機関が信用保証協会と保証取引を行うためには、前述の金融機関の範囲に含まれているだけでは足りず、金融機関と信用保証協会との間の基本契約たる約定書を締結していることが必要である。これは、信用保証を業務とする信用保証協会にとって、大量の保証取引を処理するうえで個々の取引ごとに契約内容を定めることは、迅速・確実な事務処理を不可能にすることにもなるので、個々の保証に共通する事項・手続等保証取引に関する基本事項を契約内容とした「約定書」をあらかじめとりかわしておくこととしている。

一般の保証においては、このような約定書により律されるのであるが、保証の種類によっては、約定書を基本としうつこれに補充し、またほ修正した特別の契約により律されているものがある。保証の簡易迅速化をねらいとした追認保証においては、通常の保証とは逆に先行する貸付に対し保証を貸付にさかのぼって認めているが、追認保証制度を金融機関が利用するためには、約定書の規定を修正した追認保証契約等の別途特約を信用保証協会との間に締結しておかなければならないこととなる。また、信金中央金庫等が行う代理貸付を信用保証協会が保証した場合は、代理店と信用保証協会とは委託金融機関に対し共同保証の関係に立ち、保証人相互間の負担部分の問題などが生じ、権利関係が複雑化してくることとなる。

このため、代理店の負担部分の排除など、信用保証協会と代理店の権利関係を明確にしておく必要がある。また、委託金融機関と信用保証協会の締結した約定書および事務手続要領には、代理店も当然のことながら本人である委託金融機関を代理しているのであるから拘束される。したがって、代理貸に際して信用保証を利用しようとする代理店にあっては自ら約定書を締結していると否とにかかわらず、信用保証協会との間で、前記の内容を含んだ代理貸の保証に関する覚書をとりかわしておく必要が生じてくる。

信用保証と信用保険との関係

信用保証協会による信用保証とその保険である中小企業信用保険とはどのような関係にあるか。
信用保険とは、信用保証協会の代位弁済額のうちの一定割合の額を、日本政策金融公庫が協会に対して保険金として支払う関係をいう。

債務保証の再保険的機能
信用保険とは、中小企業者に対する事業資金の融通を円滑にするため、金融機関の中小企業者に対する貸付等につき信用保証協会が保証した当該保証金額を保険することである。日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という)の信用保険部門は中小企業者の借入金等にかかる信用保証協会の保証債務を保険する。日本公庫が対象とする保険は中小企業信用保険法に基づいており、「信用保証協会が行う中小企業者の金融機関からの借入金等にかかる債務の保証」であるとされている。信用保証協会の信用保証が=定の保険要件に合致していれば、保証のつど自動的に保険関係が成立するという包括保証保険契約(約款方式)が両者の間に締結されている。

具体的には、日本公庫が保険者となり事業年度の半期ごとに信用保証協会を相手方として、普通保険・無担保保険のような保険ごとに当該信用保証協会が保証した中小企業者の借入金の総額が、それぞれ一定の金額に達するまで、その保証につき保険関係が成立する旨を定める契約を締結し、その支払うべき保険金額は、代位弁済額(利息・損害金・費用等は除かれる)の70~90%とされている。なお、信用保証協会は保険金の受領後においても、代位弁済によって取得した求償権については、日本公庫に対して回収金の納付義務を負い、回収があればそのつど保険の填補率に応じて、その回収金を日本公庫に納付しなければならない。